志村つくねの父さん母さんリヴァイアサン

文筆家・志村つくねの公式ブログ。本・音楽・映画を中心に。なるべくソリッドに。

しゅらしゅしゅしゅ PART 3

さて、下山。

冷たい小雨が降る中を、ぬめぬめお化けのような表情で歩く僕。

THE 沈鬱である。

少し休憩が必要だ。

 

途中、高橋由一館という美術館があって、これがかなりよかった。

http://www.konpira.or.jp/museum/yuichi/yuichi_2012.html

教科書に載ってる「鮭」で有名な洋画家ですね。

こぢんまりとした建物の中に27点の作品。

僕は「豆腐」の味わいがたいそう気に入り、ポストカードを買ってしまった。

食欲が湧いてきちゃうじゃないか、とても。

 

もうひとつ訪れたのは、表書院。

http://www.konpira.or.jp/museum/shoin/shoin_2009.html

大ファンの円山応挙の障壁画があると聞きつけ、入ってみたのだが、

実物をじっくりと見ることができて、うれしかった。

かわいらしい虎が襖の中でどっこい生きている表情には、たまらんものがある。

こんな部屋で読書できたら最高だろうなと考えたが、

管理・保存がめんどくさそうなので、さっさとあきらめたよ。

 

体力に余裕があれば、宝物館にも行くとよいかも。

http://www.konpira.or.jp/museum/houmotsu/houmotsu_2009.html

僕は今回は素通りしましたけれども。

三十六歌仙の何かがあるのか。へぇ。へぇ。

 

ようやく門前町にたどり着いた頃には、強い雨が降っていた。

旅行会社から配られた灸まんのタダ券を使って、お休み処で身体を温める。

甘いものを食べ、わずかに回復した体力を振り絞って、 ちょっと見ておきたかった

「こんぴら歌舞伎」の芝居小屋へ。

ここが旅のハイライトのひとつになるなんて、思いもしなかったなぁ。

http://www.konpirakabuki.jp/history/reform.html

予備知識もなしにふらっと訪ねた旧金毘羅大芝居。

現存する日本最古の芝居小屋なんだそうだが、復元・保存のお手本とでもいうべき、

支える人々の「想い」が詰まった素敵な場所でした。

時間のある人は、ガイドのおじさんたちがそれはそれは丁寧に小屋の中を

案内してくれるので、おすすめ。

花道を歩いたり、舞台に立たせてもらったり、奈落を見学させてもらったり、

観劇好きは失神すること必至。

僕は10回ぐらい立ったまま気絶しました。

今まで研究してきたことがどこかでつながったような気がして、涙目の僕。

いい旅夢気分とはこのことだと実感した。

 

帰りがけにガイドのおじさん(オネエ系)が話しかけてきて、えらい気に入られた。

オネエ:「歌舞伎は観たことあるの?」

僕:「ええ。何度か」

オネエ:「ンマァーッ!感心ねぇ。わたし松竹に知り合いがい☆@¥▲※$……!」

僕:「あっ。だいたい国立劇場で観てます」

オネエ:「ンマァーッ!ンマァーッ!国立だなんて、感心ねぇ。ちょいとお待ちね。いいものあげるから」

 

ヤバいもの渡されたらどうしようとブルブル震えながら待つこと数秒。

おじさんが持たせてくれたのは、オリジナルのうちわ(たぶん前回の歌舞伎公演の

余り)でした。

「歌舞伎の興行があるときに、またぜひいらっしゃい!」

なんて温かい人たちなんだろう。

旅のよいところはこういう出会いだね。

もっともっと日本全国を回ろうと心に誓う瞬間でした。

 

この日は琴参閣という宿に泊まった。

http://www.kotosankaku.jp/ 

その夜に事件が起こることも知らずに。

(つづく)