志村つくねの父さん母さんリヴァイアサン

文筆家・志村つくねの公式ブログ。本・音楽・映画を中心に。なるべくソリッドに。

ハマのヘド番長

一週間前のことになるが、横浜スタジアムDeNA対中日戦を楽しんだのだ。

先発の山口がたったの5球で危険球退場、延長12回でも決着がつかず引き分け

という、やるほうも観るほうも「ご苦労様でした!」という試合。

さすがに終電が心配になり、途中で帰ったんだけどね。

 

大阪出身の僕には阪神(と近鉄と南海)の遺伝子が組み込まれているのだが、

東京に出てきてからは、すっかりベイスターズファンになってしまった。

育てがいがあって、チームカラーがすっきりしているチームが好きな模様。

要するに、弱小球団を強くしていく過程を愛しているのですね。

この辺の話は、語り出すと止まらなくなるから、今日は掘り下げないぞ。

 

この時期のナイターは、実にいい。

シウマイやらビールやらを身体に流し込み、夜風を浴びる。

野球は屋外に限るなぁと再確認した一夜であった。

各球場の気持ちよさを比較すれば、甲子園が日本一なのは言うまでもない。

しかし、神宮の都会的な感覚だったり、近年のハマスタのファンサービスも

負けていないと思う。

僕が今いちばん行ってみたいのは、カープの本拠地マツダスタジアム

これは試験に出る。

 

もちろん試合の行方を追うのが本分だが、場内で繰り広げられる人間模様も賑やかで

目が離せない。

たとえば、ビールの売り子さんと必要以上に仲良くなっているおっさんども。

彼らの緩みきった表情筋をみると、生物の欲望ってすさまじいなと感心する。

 

僕など年間5試合も観に行けばよいほうだが、同じような座席を選択していると、

そのエリアに集まる売り子さんの顔を覚えるものである。

ハマスタはかわいらしいお嬢さんが多く、そのコらがおっさんに絡まれるたびに、

「すわ、おれの出番か!」などと意気込むわけです。

まぁ、たとえ出番がきても返り討ちにあうのが目に見えているけどな。

 

……僕が毎回チェックを欠かさない売り子さんが2人いるのだ。

ひとりは綾瀬はるか似の健康的な女の子。

たぶん、一塁側の内野指定席付近では向かうところ敵なしなんじゃなかろうか。

どんな酔っぱらいにも笑顔で対応する彼女の姿を見ていると、ああ、おれは

なんて心の狭い人間なのだろうと思う。

はるかに幸あれ。

 

もうひとり注目しているのは、勝手に「バンギャルちゃん」と呼んでいる女の子だ。

ここ数年、ライヴハウスに足しげく通うようになり、ある種の嗅覚を身に付けた僕。

けっこうな精度で日常に潜む「ヴィジュアル系バンドのファン」を探し当てることが

できるようになった。

その能力が、まさか球場で発揮されることになるなんて……。

 

このコはすごく爽やかなお嬢さんで、売り上げも絶好調なのだ。

ハマスタに通い始めてかれこれ5, 6年。

彼女がいつもぶら提げているタオルマフラーが気になっていた。

黒地に濃いピンク。過剰に意味をまとったフォント。

どこからどう見てもベイスターズのカラーではない。

 

このタオルが風に揺れるたびに、目を凝らしてチェックした。

うまいこと裏返って、見えそうで見えない日々。

もしかすると、あゆとかカナとかなんとかザイルとか、そっち系のファンなのかな

とも思った。

ビールを買い求めて、直接尋ねてみるという方法も考えた。

でも、そんな野暮なことはできずに月日は流れた。

 

そして、一週間前。

通路を隔てて隣のお客さんが彼女からビールを買った。

手を伸ばせば届くような距離に、それはあった。 

目の玉が飛び出すぐらい丹念に調査を開始する僕。

 

「○○○○ita 23」

 

ん……?

肝心なところが隠れて見えない。

もしかして、「Fujita 23」なのか?

現・楽天、元・横浜の藤田。ベイスターズ在籍時の背番号は23。

ああ。謎はすべて解けた。

期待していたバンド方面とはちがう解決の仕方で。

藤田、いい選手だもんな~。

ハマスタの売り子さんだもんな~。

それだとしっくりくるぅ~。

 

悲しみに顔を歪めた数秒後、天からもうひとつのアイデアが降りてきた。

 

「Lollita 23」

 

……ロリータ 23。

……ロリウィタ 23。

……少女……。

少女-ロリヰタ-23区 だっ!!!!

 

この瞬間、僕は膝から崩れ落ちた。

f:id:tsukunes:20140730042630j:plain

(一昨年の最終戦終了後、開放された横浜スタジアムにて撮影)

 

ビール売りで得たバイト代をすべて遠征に使っているんだろうか。

キャリーケースはツアーグッズでいっぱいなんだろうか。

なんと微笑ましい、そして、涙ぐましいお話。

次なる目標は「バンギャルちゃん」改め「ロリヰタちゃん」からビールを

バンバン買い込んで、お話を伺うことに決定した。

少女-ロリヰタ-23区。

ずっと前から気になっていたバンド名だけど、これを機に聴いてみます。

 

世の中には不思議なご縁もあるもんだ。

という夏の実話でした(笑)。