志村つくねの父さん母さんリヴァイアサン

文筆家・志村つくねの公式ブログ。本・音楽・映画を中心に。なるべくソリッドに。

脳たりん

野坂昭如『絶筆』(新潮社)を読んだ。

死の間際まで綴られた日記とエッセイが収録されているのだが、

全編、飄々としていて、かっこいい。

そして、読み通すうちに、日本人なら米を食わなきゃならんと思うようになった。

非常にきめ細やかな眼差しを持った人だ。

会ってお話してみたかったな。

 

僕は、野坂がCMやテレビに引っ張りだこだった頃をあまり知らない世代。

だが、彼が只者ではないことは心得ているつもりだ。

二十歳の頃に読んだ『エロ事師たち』(新潮文庫)が彼の文体との出会い。

すけべ目当てで手に取った本だが、そのストーリーにムラムラ……というよりは、

野坂のリズムに驚いた一冊だった。

こんな語り方があるのか、と。

同時に、この人が「おもちゃのチャチャチャ」を作詞し、『火垂るの墓』の原作者と

いうことが信じられなくなった。

ダンディで多彩。

己の目指すべき道が決まった瞬間だった。

 

その後、クレイジーケンバンド『青山246深夜族の夜』の「マリリン・モンロー・ノー・リターン」と「ヴァージン・ブルース」を聴き、彼の現役感に戦慄。

渋い声なんです。

そして、若いおなごにモテモテなんです。

ぜひ、聴いてみて。

 

『絶筆』の帯文「遺言であり、予言でもある。」は真実かもしれない。

本書に書かれた悪い予感が的中しないように、毎日を明るく変えていこう。

孫子の代まで大切にしなきゃいけないものがあるよね。

それを語り伝えねば。