志村つくねの父さん母さんリヴァイアサン

文筆家・志村つくねの公式ブログ。本・音楽・映画を中心に。なるべくソリッドに。

いまだイリュージョン

 久々にブログを更新してみる気になったので、書く。このところ、台風の影響で散々な天気が多く、どうにもこうにも気が滅入りがち。そんななか、「おお、ついに……!」と心躍るニュースが届いた。GUNS N' ROSES『USE YOUR ILLUSION』ボックスセット発売の報である。

 

burrn.online


「11月ゥ? November Rainの時期にリリースだなんて、洒落てるね!」とか「こんなにお金は出せません!」とか、さまざまな想いが去来するのだが、興奮というよりは実にしみじみしている自分がいる。『USE YOUR ILLUSION I』『USE YOUR ILLUSION II』という作品のことがいまだに話題にのぼる事実が、僕をおおいに喜ばせる。いやホント、この名作(迷作?)があの時期に出なかったら、僕はここまで音楽を好きにならなかっただろう。1991年のリリースから30年以上経ったということ、にわかに信じがたい。

 

『USE YOUR ILLUSION』(以下、UYI)は僕の人生を変えたアルバムなのだ。もっと正確に言えば、僕の人生が始まった1枚(いや2枚)。

 

 何度もあちこちで言ったり書いたりしていることだけれども、もう一度言わせて。僕は1991年10月から1992年9月にかけての1年間、父の仕事の都合でアメリカに住んでいた。ペンシルベニア州ハーシーという平和な田舎町。あのハーシー・チョコレートで有名な、ハーシー。……って話を続けていくと、長編記事になってしまうので、ポイントに絞って言うと、右も左もわからない(でも、それなりに日々を満喫している)小6の僕にある日天啓のように降り注がれたのが「November Rain」のMVというわけです。あまりに劇的な楽曲の展開に心奪われると同時に、目に飛び込むものすべてが信じられなかった。呆気にとられるほどカッコよかった。それまでウキウキ観ていたマイケル・ジャクソンとかクリス・クロス(懐かしい……)とは明らかに違った。

 

 この時期に、ある程度物心がついた状態で「アメリカ」を体感したことは財産だと思っている。湾岸戦争の空気がまだリアルに残り、後にオルタナグランジと呼ばれることになる、なんだか暗い音楽(幼いながらもそう感じた)が人気を博し……。とにかく、底抜けに明るいアメリカでなかったことはよく覚えている。日本を発つとき不安で泣いていた僕は、帰りの飛行機で「日本に帰りたくなくて」泣いていた。ハーシーのみんなの温かさ、風の匂い、空の広さ。40数年の半生のなかでたったの1年の出来事だけれども、僕の感性の基礎となったことは間違いない。

 

 まあ、つまり、何を言いたいかというと、僕にとって、UYIは人生最良の日々を思い出すスイッチなのであります。穢れなき魂に放り込まれた、ごった煮の危険なハードロック。

 

『UYI I』はカセットテープで持っていた。「November Rain」のシングルもカセットで。たった1年の滞在ということで、CDプレイヤーは日本に置いてきてしまったのだ。 ああ、本当に、いろんなことを思い出してしまう。ちょっと最近、センチメンタルが過ぎるんじゃないのか、自分!?

 

 何はともあれ、2022年ヴァージョンの「November Rain」が楽しみです。僕はどの形態で手に入れるのだろう? 果たして、来日公演には行けるのか? 気が向いたら、また書きますね。こうして気楽に書くことが癒しになると実感してきたぞ。