志村つくねの父さん母さんリヴァイアサン

文筆家・志村つくねの公式ブログ。本・音楽・映画を中心に。なるべくソリッドに。

2022年にGUNS N' ROSESを観る【第2回】

 11/30(水)東京ドームでKISSを、12/1(木)新宿LOFTでSTARBENDERSを観て、ときめいた。二夜連続でライヴを観に行くという行為、コロナ禍以前は当たり前の習慣だったけれど、今の僕にとってはとても大きなことなのだ。ようやく、生活の中に音楽が戻ってきたのを実感した次第。日程の間隔を空けずにライヴを観に行くと、感激の更新というか上塗りというか、そんな気分に浸れますよね。こんなに大事な情緒が欠落していたこの3年間って、何だったんだとさえ思う。
 さて、前回の記事https://tsukunes.hatenablog.com/entry/2022/11/25/000324の続きをば。立て続けに素晴らしいライヴを観たあとで、再び1カ月前のガンズモードに切り替えるのは難しいけれども、やってみよう。気付け薬に『USE YOUR ILLUSION I』のリマスター盤(これはいいものだ。予算の都合上、最低限のアイテムしか手に入れていない……)を聴いたら、さまざまな情景が蘇ってきた。
 11/6(日)GUNS N' ROSES、さいたまスーパーアリーナの第2夜、帰宅直後にしたためたメモにはこんな星取表が書かれている。

 

〇「Chinese Democracy」「Slither」「Welcome To The Jungle」「Reckless Life」「Sweet Child O' Mine」
☆「Double Talkin' Jive」「Live And Let Die」「Estranged」「You Could Be Mine」「Attitude( MISFITS cover)」「November Rain」「Nightrain」「Paradise City」
☆☆「Civil War」「Coma」

 

 前回も述べたように、○は「イイネ!」ぐらいの意味合いで、☆は「スバラシイデスネ!」といった感じ。☆の数が増えれば増えるほど感激の度合いが高くなる。この表をパッと見た印象ではアルバム『USE YOUR ILLUSION』からのナンバー強し、特に長めの曲強しといった傾向がある。第1夜のクオリティも十分満足だったのだが、第2夜のパフォーマンスはその上を行っていたんじゃないかと思えるような出来ばえ。これは両公演に言えることだが、「Estranged」「Coma」「Civil War」「November Rain」などの長めの曲が冴えに冴えていた。素敵に年齢を重ねた彼らならではの技なのだろうか、これらの楽曲に宿る深みは格別である。
 ライヴ当日は何も印をつけていなかったのだが、後々お風呂につかってる時に思い出したりするのが「Knockin' On Heaven's Door」のコール・アンド・レスポンスの部分。過去の来日公演で何度も夢見心地になったパートだ。正直なところ、コロナ以前/以後で場内のレスポンスのあり方が大きく変わってしまったことには、戸惑いをおぼえた。しかし、手拍子などによる新たな形での感動を獲得できたのも事実。5年前の自分に「ライヴで声を出すことが歓迎されない時代がやってくるぞ」と言っても、絶対に信じないだろう。心の中で、マスク越しに歌う。これはもう、祈りにも似た行為なのではないか。まあ、我慢しきれずにどでかい声を出している人もいましたが、それが圧倒的に少数派というのはすごいことである。
 分析とまではいかないが、イトミミズがのたうち回ったような字で書かれたメモが出てきたので、一部をご紹介しておこう。

 

・いつまで経っても「You Could Be Mine」のドライヴ感が好き。BPM的にはそんなに凄くないと思うのだが、ライヴで聴くと、体感速度がえげつない。そこがミソ。
・「Reckless Life」「Shadow Of Your Love」「Absurd」「Hard Skool」など、新曲を含む「前回の来日では聴けなかった曲」をたっぷりと聴けた喜び。特に、「Hard Skool」はリリースされた瞬間からの僕のお気に入りで、この曲がライヴだとどう化けるかに関心を寄せていたのだった。結果として、想定の範囲内。カッコいいのはカッコいいのだけれど、ここに制御不可能なキレっぷりが加わると完璧な気がする。その一方で、あまり期待していなかった「Absurd」がなかなかの名チューンで、自然と体が揺れてしまった。ただし、バックに流れる映像がどうにも悪趣味で困ってしまう。「メデューサ的なよくわからん怪物がどアップで映し出され、緑色のゲロを吐く」という、そりゃまあアブサード(=馬鹿げた)な作風。あまりにも謎すぎて画面に見入ってしまった。そこが彼らの狙いなのか?
・非の打ちどころのないセットリスト。ダレない程度にたっぷりの分量。聴きたかった曲はほぼすべて聴けたのだが、いや、それでも! 僕にはもっと聴きたい曲がありまして! たとえば、「Right Next Door To Hell」「Back Off Bitch」「Oh My God」「Pretty Tied Up」「Locomotive」「Perfect Crime」あたりを生で聴けた暁には僕は昇天してしまうことであろう。あっ、AC/DCのカヴァーや「Black Hole Sun」(SOUNDGARDEN cover)も聴きたかったな。

 

 ところで、僕はこの二夜連続公演そのものに☆3つを付けている。ライヴの内容が大満足だったうえに、鑑賞者としての勘があまり鈍っていない点にホッとしたということが大きい。今回のライヴ観覧には自分なりのミッションを課していて、「まっとうな感覚」を取り戻すことが最重要課題だった。ヒヤヒヤしながらチケットを取り、コンビニで発券し……という当たり前の流れさえも見失っていた僕にとって、この機会は実りあるものとなった。ライヴを観る感覚は、その場に放り込まれさえすれば、一瞬で蘇るもの。たとえ数年のブランクがあっても、客電が落ちた瞬間、一気に「嬉しい非現実」に引き戻されるのだなと悟った。これぞ快楽。生きてるって感じがする。
 ちなみに、第2夜のサポート・アクト、BAND-MAIDGRANRODEOも僕の鈍りきった五感を心地よく刺激してくれた。BAND-MAIDはぜひ単独公演で観てみたい。今回のようなよそゆきのショウよりも、自分たちのテリトリーに誘い込んだ時のほうが真の魅力を発揮するとみたが、どうか。GRANRODEOはいつぞやの何かのフェスで数回観たことがあるはず。演奏がタイトで、アッパーな風合いに興味を持ったが、熱心なファンのサイリウムの振り方に「おお……」とのけぞった。2017年のサポート・アクトがBABYMETALとMAN WITH A MISSIONだったことを考えれば、この前座枠には「定評のあるジャパニーズ・カルチャー」がぶち込まれるのだなと妙に納得してしまった。第1夜のLOUDNESSは別格として、次回来日公演(!)ではどんなサポート・アクトがガンズにハマるか空想するのも悪くない。
 なんだかんだ言って、2002年のサマソニ以降、GUNS N' ROSESのライヴを何度も目撃する人生になった。こんなこと、90年代には考えてもみなかった。僕が地球上で最も愛する曲「November Rain」をも冷静に観られるようになったのだから、年月の流れは尊い。まだまだこの続きが観たい。GUNS N' ROSESというバンド名は、つくづくいい響きだなと思う。その姿を拝めるだけで感涙していた時代もあったのに、眼前で繰り広げられる名演を欲している贅沢な自分に気づいた。これは非常に健全なことなのだろう。
 とても良いものを観た。自分にとって、ここが新たな出発点になると思った。