志村つくねの父さん母さんリヴァイアサン

文筆家・志村つくねの公式ブログ。本・音楽・映画を中心に。なるべくソリッドに。

大阪でLOUD PARK 2023を観た~FOR PANTERA

 Twitterでもちょこっと書いたように、LOUD PARK 2023の大阪会場に行ってきた。6年ぶりの限定復活(しかも秋ではなく春)となったこの催し、僕は並々ならぬ思い入れがあるのだ。2006年の初年度から2017年の最終回にかけて皆勤賞だったのが秘かな誇り。毎回心揺さぶられるドラマがあり、魅力的なアクトが登場し、友人の輪が広がる。そんなメタルの快楽を思う存分味わうことのできる貴重なお祭り。しかも、あのPANTERAがヘッドライナーとあっては参加しないわけにはいかない。

 LOUD PARK前身フェスにあたるBEAST FEASTには行ったことがない。つまり、PANTERAを観るのは生まれて初めてなのである。ヴィニー・ポールダイムバッグ・ダレルの非凡な兄弟による神懸かりの音を浴びることは叶わなかったが、チャーリー・ベナンテとザック・ワイルドですよ! 代役という言葉は用いたくないぐらいパーフェクトな布陣だと思った。そして何より、友情と敬意を想う。

 会場となったインテックス大阪に足を踏み入れたのは、2005年のSUMMER SONIC以来ということになる。帰省のついでにNINE INCH NAILSSLIPKNOTDEEP PURPLEなどを観たのだそうだ。コスモスクエア駅から会場までの殺風景な道のりにドン引きしたけれども、いざ現地に着いてみれば、「あっ。幕張じゃなくてこっちを選んでよかったかも」と思うほどにはホッとした。場内スペースが適度にコンパクトだったわけである。大阪中心部からのアクセスもそれなりに良好なので、首都圏における「幕張遠いよ問題」に悩む人は、今後この手の選択肢を考えてみてもよいかもしれない。

 今回は物販はパス。今回は、というより、ここ数年は加齢による体力の限界を感じているため、ライヴが始まるまではなるべく消耗しないようにしているのだ。20代の頃などは始発に乗って物販列に並んだりしていたものだが、今思えば、あまりに非効率的かつクレイジーな所業だったと猛省している。会場に入ってから、横目で残りグッズを確認するぐらいのことはしたけれども、目をつけていたザックTシャツをはじめ、ほぼすべての種類・サイズが売切だった。当然といえば当然か。グッズを買うには気合いが要るのだ。

 話を戻そう。ここからは、各アクトを観て感じたことを綴ったメモを公開したい。レポというよりはメモですね。ネタバレなどを気にされる方はご注意を。

 

■BLEED FROM WITHIN

 スコットランド出身のバンドなのだそうだ。恥ずかしながらノーマークだったのだが、ビートの小気味よいメタルコアだと思った。「メタルコアってどんな音楽?」と問われたら「こういうやつです」と引き合いに出したくなるような音像。1番手だというのに、ブロック内には人がすし詰めである。MCがすべっていた点はご愛嬌か。

 

STRATOVARIUS

 この手のフェスにおける貴重な存在である。彼らの登場により、ステージが一層LOUD PARKらしくなった気がする。ただ、メロディが大切なバンドであるにもかかわらず、僕の立ち位置では終盤までギターとキーボードの音が埋もれがちだった点が残念。「Black Diamond」と「Hunting High And Low」の美麗さはいつ観ても、さすが。欲を言えば「Speed Of Light」を聴きたかったが、欲張りすぎはよくない!

 

NIGHTWISH

 これぞシンフォニック・メタル。壮大オブ壮大。もはや、楽曲がどうとかいう次元ではない。バックに流れる映像も非常に凝っており、ヨーロッパで絶大な人気を誇るという事実にも頷ける。楽器隊のアンサンブルも素晴らしいのだけれど、あの美声。全曲を披露し終えてからのカーテンコール的な演出の後ろに「通天閣大阪城梅田スカイビル空中庭園)」という大阪三大建築(?)の画像がデデン! と大写しされたのには笑った。何を根拠にあのセレクションに至ったのだろう? 幕張ではどんな建物が選ばれたのか気になるところ。

 

■KREATOR

 ここから更にLOUD PARKらしい雰囲気に。ステージ両サイドには大槍で串刺しにされた人形……? とにかく物騒なオブジェが設置され、邪悪な空気が場内に広がっていく。いつぞやのスラドミで観て興奮した記憶はあるのだが、フレデリク・ルクレール加入後の布陣を観るのはこれが初めて。曲が始まった瞬間にスラッシュ・メタル狂の観客のスイッチが入るのがわかった。たっぷりのパイロに加え、銀テープが2回も舞う演出も見ごたえがあった。自分の想定以上にビッグなバンドだったんだなと再評価。

 

■PANTERA

 「PANTERAを観たことがある人生にしたかった」というのが今回LOUD PARKのチケットを取った理由だ。DOWNは2回ほど観たことがあるし、なんならコロナ禍直前のフィリップ・アンセルモのソロも観た(あれはなんだかだらしがなくて、良くなかった……)。ヴィニー・ポールに関してはHELLYEAHのみ体感している。でも、そんなの関係ない。僕が観たいのはPANTERAによるPANTERA楽曲の演奏だ。オリジナル・ラインナップによる演奏は叶わなくなってしまったが、レックスのベースを初めて目に焼き付けることができるのは嬉しい材料。

 結果はどうだったか。これがもう、「知らない曲はない(そりゃそうだ)」と大興奮してしまうようなセットリスト。フィルが終始ゴキゲンで、事あるごとにオーディエンスに感謝を述べていた姿が印象的だった。レックスは現在のX JAPANでいうところのPATA的なポジションと見た目だよなぁなんて思いながら、しみじみとしてしまった。チャーリーの技量はタイトだし、ザックはちゃんとザックのアクションをしていた。やや厳しめにいえば、ダイムバッグ・ダレルの音というよりは、ザックのアイデンティティを損なわないような音だったかと思う。だが、そんなのは非常に細かいことで、PANTERAという屋号の持つ重みをしっかりと継承してくれた心意気に拍手を送りたくなった。

 

 とまあ、こんな感じだったのです。今回の大阪会場では、ブロック指定により観覧エリアが制限されていたけれども、僕のいたB4エリアではそれほど深刻な問題は見受けられなかった。ただし、様子のおかしい暴れ方をする輩はどこにでもいるもの。モッシュの意思のない人を引きずり倒すタイプのモッシュ扇動者はKREATORに串刺しにされればいいと真剣に思った。楽しみ方は人それぞれでいいと思うが、他者の楽しみ方を侵害してはいかんよ。

 本日は幕張にて、「フルサイズのLOUD PARK」が開催されている。CARCASSやAMARANTHEやH.E.R.O.など、大阪で観られなかったことは残念だが、友人たちのお土産話を楽しみにしておこう。やはり、メタルのお祭り会場で浴びるあの音圧は、言葉では表せないぐらい格別なのだ。

 

 ドサクサに紛れて言ってしまうと、大学の軽音サークルでのデビュー戦、PANTERAのコピーバンドでヴォーカルを務めたのがちょうど20年前のこと。セットリストは①Mouth For War ②Fucking Hostile ③Cowboys From Hellだったかな。歌唱スタイル的にも、見た目的にも、「そういうキャラじゃない」のに、我ながらよくやったと思う。あそこで勇気ある行動を選択したからこそ、その後、飛躍的に友達が増え、今に至るのだ。人生ってどう転ぶかわからない。重要なのは愛と敬意ですよ。しばらくはPANTERAのオリジナル・アルバムを片っ端から聴き込もうと思います。