志村つくねの父さん母さんリヴァイアサン

文筆家・志村つくねの公式ブログ。本・音楽・映画を中心に。なるべくソリッドに。

ペーパードライバー狂習【短期集中連載:第7回(最終回)】

 こんにちは。ペーパードライバー歴3か月の僕がブイブイいわせますよ。何を隠そう、あの秋の濃密な教習以降、ハンドルを握っていないのだ。とはいえ、街を走る車の「身のこなし」に関心を持つようになったし、住宅街を歩いては「この車、いいなあ」ぐらいの感想を抱くようになった。自宅に車のない自分にとっては、たいした成長だと思う。買物、送迎、ドライブ……いつか誰かのお役に立てることを夢見ながら、毎日イメトレに余念がない。
 2000年頃のプレステに「免許をとろう」という教習所シミュレーションゲームがあった。僕はこれを武蔵小金井のシータというゲームショップで買い求め、数回プレイしただけで飽きた記憶がある。基本的にビビりなので、教習所通いの前にひと通りの流れを叩き込んでおこうと思ったのだが、どうもノレない。やはり、実地に勝るものはなし。ヒーコラ言いながら、約2週間の短期集中パックでマニュアル車の普通免許を取得したのが大学2年の夏である。
 そこから月日は流れ……。まさか43歳にもなって、ペーパードライバー教習なるものを受講することになるとは夢にも思わなかった。8コマ5万円のそのパックは、最低限の運転の勘を取り戻すには効率が良く、同じような境遇でお困りの人にお勧めしたくなるほど。中年になってわかったことだが、学校というシステムは素晴らしい。イヤ〜なことも半ば強制的に仕込んでくれるのだから、ありがたいものだ。
 教習所で習ったことをおさらいするために、僕はYouTubeを漁った。玉石混淆とはまさにこのこと。非常にためになる動画もあれば、まるで視聴者目線に立っていないものもある。そんななか、僕は一人の配信者に注目し、毎日少しずつ学んでいる。

車の運転を一から教えます【愛知・岐阜・三重・滋賀のペーパードライバースクール】 - YouTube

という動画なのだが、インストラクターの男性が実に真面目でよろしい。名古屋・岐阜あたりの訛りがちょっと入っているのも微笑ましい。見た目が僕の友人に似ているというのもポイントが高い。運転復帰を考えている人は、まずこの動画を見れば、ひと通りのイメージを身につけることができるだろう。
 肝心の教習所なのだが、今回僕がお世話になったところは、たまたま相性が良かっただけな気がしてきた。複数の公式サイトを比較検討し、ペーパードライバー教習に力を入れていそうな学校を絞り込む努力が必要だ。探し当てるコツは教習所の放つ「オーラ」なのかな、知らんけど。
 僕が通った学校のリンクをここに貼っていい気もするのだが、なんだか気恥ずかしいのでやめておく。現金5万円が当たる「ピクトグラムふきだしコンテスト」なる大喜利系のイベントが定期開催されている点、常軌を逸した教習所だと思う。僕もちゃっかり参加しておいたけれども。まあ、ここまでのヒントでおおよその教習所が特定されちゃいますな。それもまた一興。

 思えば、目的地まで厚かましく同乗させてもらったり、イベント帰りに家の近所まで送っていただいたりと、僕の周囲のドライバーは皆、優しかった。自分も友人たちに対して、そういうふうに振る舞えたら最高だと思う。が、命の保証はない。いつか僕が運転する車に乗る人は、もれなく然るべき保険に加入しておいてほしい。犬死だけはさせない。

 教習の終盤で登場した毒蝮教官が言っていた。車庫入れはミニカーでも練習できるよ、と。ミニカーね……その日、さっそく近所の百均に立ち寄り、おもちゃのコーナーを眺めていたら、子連れのお母さんに不気味がられた。結局、何も買わずに店を出た。夕日がやけに大きく見えた。