志村つくねの父さん母さんリヴァイアサン

文筆家・志村つくねの公式ブログ。本・音楽・映画を中心に。なるべくソリッドに。

2022年にGUNS N' ROSESを観る【第3回】

 えっ、もう年の瀬ですって……。ガンズの来日公演から1カ月以上が経ち、BURRN!、ヘドバン、rockin' on、MASSIVEなど、ライヴレポや観戦記が綴られた媒体が出揃った。自分が観に行ったライヴがどのように語られているのかを知るのは非常に楽しいもの。いずれの記事も非常に興味深く、同じ公演を観ていても、解釈は人それぞれなのだなと感心してしまう。これはもう、完全に僕の好みの問題なのだが、取材対象に対する愛が溢れんばかりになっていて思わずニヤリとしてしまうような記事が読みたいのだ。共感の度合いを深めたい。言葉を尽くした形跡のある文章に触れたい。何が言いたいかって、アクセルの容姿や声を揶揄し、それを落としどころにするようなレポにはこれからも厳しい目を向けていきたいということですね。何年も前から思っていることだけれども、ポイントはそこじゃないから。今回はヘドバンの川崎りょうさんのレポと『USE YOUR ILLUSION』ボックス・セット解説の新鮮な視点を楽しんだ。とてもじゃないが、僕にはこんな豊富な情報量の文章は書けない。年齢が近く、ぶれない視点を持った書き手の活躍は心強く、うれしいものです。
 各種記事から刺激を受け、第3回は何を書くべきか。そういえば、あの2日間にまつわるこぼれ話的なことを語っていなかった。こぼれるような話もないくらいに、僕の心身はまっすぐコンサートそのものに向かっていたのだが、いろいろ思い出してみよう。
 チケットはガンズの公式ファンクラブNIGHTRAINにて購入。年々会員特典がしょぼくなっているので、そろそろ退会しようかなと考えていたが、踏みとどまったおれは偉い。このFC、日本時間の深夜(かつ変な時間)に重要な告知を繰り出してくる傾向があり、心臓に悪いのだ。「果たして、チケット販売開始時間に自分は身動きがとれるのか、ここで買えなかったらすべてを諦めよう、それも神様の采配だ」などと訳のわからぬことを考え出す始末。まあ、そんな心配も杞憂に終わり、販売開始とほぼ同時にPC前に着席できたのだが、問題は席種である。ネット上でチケットを買うという行為もほぼ3年ぶりのため、大袈裟なくらい「チケ発」に緊張している自分がいる。指先が震える。ついでに脳味噌も震える。ここは一発、奮発してGOLD指定席35,000円也の購入を! とも考えたが、分相応ってものがある。悩みに悩んだ挙げ句、両日、SS席19,000円也を買い求めたのだった。
 僕はどんなに好きなアーティストであっても、最前列に近い位置でガッツリと観ることが苦手なのである。ステージとある程度の距離を保って事の成り行きを見守るというほうが性に合っているのだ。まるで強がりを言っているみたいだが、実際にそうなのだから仕方がない。おそらく、ガンズを手が届くくらいの距離で観てしまった暁には、メデューサに睨まれた者のごとく、石と化してしまうことだろう(あっ、でも、一回ぐらいは最前列で観てみたいのぅ)。結果として、この2日間は、GOLD指定席のブロックのすぐ後ろ、アリーナど真ん中の前方というナイスな位置で観覧。こういう恩恵があるから、ファンクラブというものを軽視できない。
 35,000-19,000=16,000。2日間で32,000円が浮く。これをグッズ資金に回せば……などと考え出すのも人の性。僕も当初はグッズを買う気まんまんだったのですよ、物販リストを見るまでは。人それぞれに好みがあるから、滅多なことは言えないが、そのリストの中に僕の求める物品は見当たらなかった。ライヴ通いを続けて四半世紀、こんなことはレアケース中のレアケースである。強いて言うなら、潰しが効きそうなデザインのロンTぐらい? 九谷焼の豆皿セット……要らないなぁ。これはガンズに限らず、海外アーティストのグッズにありがちなのだが、米西海岸の日本料理屋風の趣向(フォントとか)が前面に出されると、途端に萎える僕がいる。「うぉぉ、これは欲しいッ!」とその場で身悶えしちゃうような意匠のものがあれば、2022年の良い記念になったのになぁ。その点、前回の来日公演の物販ラインナップは結構いい線いってたと思う。あれを基準にしたい(断言)。
 公演当日、開場時間近くにさいたま新都心駅に降り立った僕は、スーパーアリーナ方面へしばらく歩いたところで「あっ……」と状況を察する声を出してしまった。右手に見えますのは、万里の長城よろしく、遥か彼方までとぐろを巻いたグッズ販売待機列。あの光景で爽やかに諦めがついた。開演まで体力も温存できたし、何よりライヴそのものに集中できたのがよかった。さらには、NIGHTRAINのパスポート(会員証のようなもの)に貼るシールの受け取りを忘れなかったのは偉かった。物販出口の誘導係のお兄さんに声をかけてシールをもらうという方式(お兄さん、明らかに迷惑そう)は謎だったが、印象深い思い出ではある。
 2日目の終演後、友人と待ち合わせて久々の再会を喜び、途中まで一緒に帰ったのも良い思い出。というか、コロナ禍以前はこんなこと、日常 of 日常だっただけに、感慨深くなる。「友人とライヴの感想を語り合う。そして、新譜の情報などを共有する」というささやかな行動ひとつに感動しきりの僕であった(その節はあまり饒舌でなくて、すみません)。
 夢まぼろしのような11月5日と6日の2日間の後、僕は長い時間をかけて、『USE YOUR ILLUSION』のリマスター盤(2枚組のデラックス・エディション×2作)を聴いた。1日に2,3曲ぐらいのペースで。すると、どうだろう。今回のライヴを経て、この名盤の聴き方に大きな変化が生じたのだった。『II』に収録の「14 Years」や「So Fine」といった、ティーンエイジャーの頃には「飛ばしていた曲」に妙に愛着が湧いてきたのである。どちらかと言えば、僕は『I』を愛好する者であり、『II』を好む人にはひそかな対抗意識(?)を燃やしていたりもした。たしかに、『II』のほうがアルバムとしてのまとまりが良さそうだし、通好みの名曲が揃っている気がしなくもない。ジャケットの配色だってカッコいい。『II』の青と紫を基調としたデザインは、湾岸戦争当時の気だるい空気をまとっていて、大人だ。その一方、『I』の赤と黄は攻撃的でやんちゃな小僧といった趣である。僕は『USE YOUR ILLUSION』という作品全体のことをわかっていなかった。今もきっとわかっていない。今後もわからないかもしれない。でも、そこが底知れぬ魅力なのだと思う。秘蔵ライヴ音源も聴ける今回のリリースは、思いがけない喜びをもたらしてくれている。
 他でもない、この2022年にGUNS N' ROSESを観たことは、僕の今後の生きざまにも関わってくる。第3回はだいぶまとまりのない文章になってしまったと反省。もうこれ以上、書くネタはないだろうから、この辺で一旦締めさせていただこう。それにしても、ガンズの皆さんは日本がお好きですね! 好きじゃないと、こんなに頻繁に訪れないでしょう。次はB!誌のクロス・レビューで平均点95以上の新譜を引っ提げて来日していただきたい。最前列で観るから。

2022年にGUNS N' ROSESを観る【第2回】

 11/30(水)東京ドームでKISSを、12/1(木)新宿LOFTでSTARBENDERSを観て、ときめいた。二夜連続でライヴを観に行くという行為、コロナ禍以前は当たり前の習慣だったけれど、今の僕にとってはとても大きなことなのだ。ようやく、生活の中に音楽が戻ってきたのを実感した次第。日程の間隔を空けずにライヴを観に行くと、感激の更新というか上塗りというか、そんな気分に浸れますよね。こんなに大事な情緒が欠落していたこの3年間って、何だったんだとさえ思う。
 さて、前回の記事https://tsukunes.hatenablog.com/entry/2022/11/25/000324の続きをば。立て続けに素晴らしいライヴを観たあとで、再び1カ月前のガンズモードに切り替えるのは難しいけれども、やってみよう。気付け薬に『USE YOUR ILLUSION I』のリマスター盤(これはいいものだ。予算の都合上、最低限のアイテムしか手に入れていない……)を聴いたら、さまざまな情景が蘇ってきた。
 11/6(日)GUNS N' ROSES、さいたまスーパーアリーナの第2夜、帰宅直後にしたためたメモにはこんな星取表が書かれている。

 

〇「Chinese Democracy」「Slither」「Welcome To The Jungle」「Reckless Life」「Sweet Child O' Mine」
☆「Double Talkin' Jive」「Live And Let Die」「Estranged」「You Could Be Mine」「Attitude( MISFITS cover)」「November Rain」「Nightrain」「Paradise City」
☆☆「Civil War」「Coma」

 

 前回も述べたように、○は「イイネ!」ぐらいの意味合いで、☆は「スバラシイデスネ!」といった感じ。☆の数が増えれば増えるほど感激の度合いが高くなる。この表をパッと見た印象ではアルバム『USE YOUR ILLUSION』からのナンバー強し、特に長めの曲強しといった傾向がある。第1夜のクオリティも十分満足だったのだが、第2夜のパフォーマンスはその上を行っていたんじゃないかと思えるような出来ばえ。これは両公演に言えることだが、「Estranged」「Coma」「Civil War」「November Rain」などの長めの曲が冴えに冴えていた。素敵に年齢を重ねた彼らならではの技なのだろうか、これらの楽曲に宿る深みは格別である。
 ライヴ当日は何も印をつけていなかったのだが、後々お風呂につかってる時に思い出したりするのが「Knockin' On Heaven's Door」のコール・アンド・レスポンスの部分。過去の来日公演で何度も夢見心地になったパートだ。正直なところ、コロナ以前/以後で場内のレスポンスのあり方が大きく変わってしまったことには、戸惑いをおぼえた。しかし、手拍子などによる新たな形での感動を獲得できたのも事実。5年前の自分に「ライヴで声を出すことが歓迎されない時代がやってくるぞ」と言っても、絶対に信じないだろう。心の中で、マスク越しに歌う。これはもう、祈りにも似た行為なのではないか。まあ、我慢しきれずにどでかい声を出している人もいましたが、それが圧倒的に少数派というのはすごいことである。
 分析とまではいかないが、イトミミズがのたうち回ったような字で書かれたメモが出てきたので、一部をご紹介しておこう。

 

・いつまで経っても「You Could Be Mine」のドライヴ感が好き。BPM的にはそんなに凄くないと思うのだが、ライヴで聴くと、体感速度がえげつない。そこがミソ。
・「Reckless Life」「Shadow Of Your Love」「Absurd」「Hard Skool」など、新曲を含む「前回の来日では聴けなかった曲」をたっぷりと聴けた喜び。特に、「Hard Skool」はリリースされた瞬間からの僕のお気に入りで、この曲がライヴだとどう化けるかに関心を寄せていたのだった。結果として、想定の範囲内。カッコいいのはカッコいいのだけれど、ここに制御不可能なキレっぷりが加わると完璧な気がする。その一方で、あまり期待していなかった「Absurd」がなかなかの名チューンで、自然と体が揺れてしまった。ただし、バックに流れる映像がどうにも悪趣味で困ってしまう。「メデューサ的なよくわからん怪物がどアップで映し出され、緑色のゲロを吐く」という、そりゃまあアブサード(=馬鹿げた)な作風。あまりにも謎すぎて画面に見入ってしまった。そこが彼らの狙いなのか?
・非の打ちどころのないセットリスト。ダレない程度にたっぷりの分量。聴きたかった曲はほぼすべて聴けたのだが、いや、それでも! 僕にはもっと聴きたい曲がありまして! たとえば、「Right Next Door To Hell」「Back Off Bitch」「Oh My God」「Pretty Tied Up」「Locomotive」「Perfect Crime」あたりを生で聴けた暁には僕は昇天してしまうことであろう。あっ、AC/DCのカヴァーや「Black Hole Sun」(SOUNDGARDEN cover)も聴きたかったな。

 

 ところで、僕はこの二夜連続公演そのものに☆3つを付けている。ライヴの内容が大満足だったうえに、鑑賞者としての勘があまり鈍っていない点にホッとしたということが大きい。今回のライヴ観覧には自分なりのミッションを課していて、「まっとうな感覚」を取り戻すことが最重要課題だった。ヒヤヒヤしながらチケットを取り、コンビニで発券し……という当たり前の流れさえも見失っていた僕にとって、この機会は実りあるものとなった。ライヴを観る感覚は、その場に放り込まれさえすれば、一瞬で蘇るもの。たとえ数年のブランクがあっても、客電が落ちた瞬間、一気に「嬉しい非現実」に引き戻されるのだなと悟った。これぞ快楽。生きてるって感じがする。
 ちなみに、第2夜のサポート・アクト、BAND-MAIDGRANRODEOも僕の鈍りきった五感を心地よく刺激してくれた。BAND-MAIDはぜひ単独公演で観てみたい。今回のようなよそゆきのショウよりも、自分たちのテリトリーに誘い込んだ時のほうが真の魅力を発揮するとみたが、どうか。GRANRODEOはいつぞやの何かのフェスで数回観たことがあるはず。演奏がタイトで、アッパーな風合いに興味を持ったが、熱心なファンのサイリウムの振り方に「おお……」とのけぞった。2017年のサポート・アクトがBABYMETALとMAN WITH A MISSIONだったことを考えれば、この前座枠には「定評のあるジャパニーズ・カルチャー」がぶち込まれるのだなと妙に納得してしまった。第1夜のLOUDNESSは別格として、次回来日公演(!)ではどんなサポート・アクトがガンズにハマるか空想するのも悪くない。
 なんだかんだ言って、2002年のサマソニ以降、GUNS N' ROSESのライヴを何度も目撃する人生になった。こんなこと、90年代には考えてもみなかった。僕が地球上で最も愛する曲「November Rain」をも冷静に観られるようになったのだから、年月の流れは尊い。まだまだこの続きが観たい。GUNS N' ROSESというバンド名は、つくづくいい響きだなと思う。その姿を拝めるだけで感涙していた時代もあったのに、眼前で繰り広げられる名演を欲している贅沢な自分に気づいた。これは非常に健全なことなのだろう。
 とても良いものを観た。自分にとって、ここが新たな出発点になると思った。

2022年にGUNS N' ROSESを観る【第1回】

 あの日から3週間が経とうとしている。放心状態のまま生活に追われていた。時の経つのは残酷だ。さて、何から書き始めようかと考える。
 11/5(土)と6(日)の2日間、GUNS N' ROSESのさいたまスーパーアリーナ公演を観た。かねてより公言しているが、僕が最も愛するバンド、ロックに目覚めるきっかけとなった罪深い人たちである。2002年のサマソニでアクセル(この世に本当に存在するんだ!)を初目撃して以来、来日公演には欠かさず出かけている。前回の来日は2017年1月。オリジナル・メンバーのスラッシュとダフが帰還し……などといった、どこでも読める野暮な情報をここに書いても仕方がないので割愛。大阪、神戸、横浜、さいたまの全5公演に出かけ、行く先々で「ご当地Tシャツ」を買い込むなど、かなり興奮した状態でライヴに臨んだことも記憶に新しい。各会場で目にした光景、出会った友人たちとの交流なども実に美しい思い出だ。
 そして2022年11月である。調べてみたら、僕がライヴというものを観に出かけるのは昨年夏の清春の渋谷さくらホール公演以来、1年4カ月ぶり。来日公演に至っては、2020年1月末のQUEEN + ADAM LAMBERT(フィリップ・アンセルモもこの時期か)以来2年10カ月ぶりなのだから、あまりにも久々、大変ご無沙汰しておりますという心境だ。こんなボンクラな僕でも、コロナ前はいち音楽ファンらしく旺盛に活動していたと思う。それがこの3年で……ああ……。年間120本観に行っていたライヴがゼロに等しくなったのだ。家庭の事情など、コロナ下でのさまざまな理由があったにせよ、この数字はむごい。今回よーくわかったのは、ライヴの場を体感することによって、僕がいかに日頃のストレスを発散させ、未来に向かって気分を切り替えていたかという事実だ。音楽には不思議な力がある。
 まあ、自分のことはさておき、今回のガンズは素晴らしかったですよ。毎回「すごくよかった!」とか「言葉にできない!」とかいった感想を述べていた気がするが、2022年の喜びは今まで味わったものとは別次元。もちろん、コロナ下で溜まったどす黒い感情を吹き飛ばしてくれたということもあるが、それ以上に感服したのは、今のGUNS N' ROSESの状態が素敵なものであること。さらに言えば、毎晩、名演を生み出す準備が整っていることだ。従来のガンズには、その姿を拝めただけで満足、定刻に開演されればホッと安心という要素に目が行きがちだった。だが、いま注目すべきはライヴという場における「真の意味で、新旧織り混ぜた」楽曲たちのクオリティの高さだろう。バンドの歴史の中でも心身ともに健全な状態で放たれる音と声には、圧倒的な説得力が備わっている。円熟味などという言葉を気軽に彼らに対して使いたくはないが、従来の来日公演には見られなかった類いの深み。スラッシュのトーンは香り高く、ダフの立ち居振舞いは精悍、そして何よりアクセルの声はパーフェクト・クライムだ(やってほしかったなぁ、「Perfect Crime」)。
 久しぶりに覚悟を決めて臨んだライヴだったので、1曲目から落涙モードになっちゃうんじゃないかと思ったが、そこは意外にも冷静な自分がいて、「おれ、なかなかやるやん!」と自信を深めたことである。それはともかく、過度に興奮することなく第1夜のガンズに臨めたのは、オープニング・アクトLOUDNESSの刺激的な演奏のおかげだ。国内外で場数を踏んできた彼らだからこそ成し得た魅せ方だったと思う。あの爆音、特に高崎晃のギターの一閃によって、僕は完全に目が覚めた。背中を押してくれる音楽がこの世にはあると確信した瞬間だった。
 定刻から(たったの!)20分ほどが過ぎた頃、場内が暗転し、極上の時間が始まった(こういう言い回しで文章を書くのも久しぶりですね!)。このツアーはアジア・パシフィック・ツアーの幕開けという位置付け。中南米各国で9月から10月にかけて行われていたツアーのセットリストは一切見ていない。いや、嘘だ。ネットで検索したセトリを薄目で見るぐらいのことはしていた僕だが、1曲ごとに「おっ、そう来たか!」と頷いたり、フンフン揺れたりしながら、今自分がここに居ることの意味を確かめていた。やっぱりアペタイトの曲は根強い人気なんだなぁなどと場内の反応を興味深く見守っていたら、どこかで聞き覚えのあるリフが鳴った。「Slither」だ。そりゃ思わず前のめりにもなりますわ。VELVET REVOLVERというバンドの奇跡的なカッコよさについては稿を改めたいところだが、この曲をアクセルが歌っているのだから胸いっぱいである。「生きていれば、いろんなことが起こるのぅ」と妙に感慨深くなったりするうちに、悦ばしい時間は経過していくのだった。ライヴって、始まった途端に終わりに向かっているのだ。なんと儚いロマン。
 僕には、感銘を受けた公演のセットリストを帰宅直後にノートに書き付ける性癖があって、この2日間も然るべき儀式を執り行った。そのノートを読み返してみると、第1夜で〇が付いた曲は「Chinese Democracy」「Double Talkin' Jive」「Reckless Life」「Shadow Of Your Love」「Hard Skool」「November Rain」「Nightrain」「Coma」。これらの更に上、☆の評価がついたのは「Slither」「Live And Let Die」「Sweet Child O' Mine」「Paradise City」で、「You Could Be Mine」「Civil War」「Patience」に至っては、よほど嬉しかったのか、☆が2つもついている(ちなみに、☆が3つつくことは非常に稀。この点、僕のジャッジは厳しい!)。
 1曲目の「It's So Easy」にはやや手さぐり感があったが、歌えば歌うほど、奏でれば奏でるほどに僕の望むガンズの姿になっていった点はさすが。どう考えても、この2日間のアクセルの声の調子はずば抜けていた。楽曲単位でいえば、ウクライナのことを前面に出した「Civil War」が最大のハイライトだと誰もが認めることだろう。だが、僕が第1夜で最も感激したのは、アンコールで披露された「Patience」なのである。もともと大好きな曲ではあるのだけれど、ここ数年の自分の「耐え忍び」を思い出し、ウゥゥとその場にしゃがみ込みそうになるほどやられてしまった。しかも、スラッシュ、ダフ、リチャードの弦楽器隊によるビートルズ「Blackbird」のアコースティック・インストを導入部に据えての「Patience」。こんなの、至高以外の何物でもない。ラストの「Paradise City」では紙吹雪の演出こそなかったものの、僕には見えた、極楽の紙吹雪が。
 というわけで、第1夜のことをサラッと書いただけで、結構な分量になってしまった。第2夜およびこの2日間にまつわる小噺は次回以降に……。

いまだイリュージョン

 久々にブログを更新してみる気になったので、書く。このところ、台風の影響で散々な天気が多く、どうにもこうにも気が滅入りがち。そんななか、「おお、ついに……!」と心躍るニュースが届いた。GUNS N' ROSES『USE YOUR ILLUSION』ボックスセット発売の報である。

 

burrn.online


「11月ゥ? November Rainの時期にリリースだなんて、洒落てるね!」とか「こんなにお金は出せません!」とか、さまざまな想いが去来するのだが、興奮というよりは実にしみじみしている自分がいる。『USE YOUR ILLUSION I』『USE YOUR ILLUSION II』という作品のことがいまだに話題にのぼる事実が、僕をおおいに喜ばせる。いやホント、この名作(迷作?)があの時期に出なかったら、僕はここまで音楽を好きにならなかっただろう。1991年のリリースから30年以上経ったということ、にわかに信じがたい。

 

『USE YOUR ILLUSION』(以下、UYI)は僕の人生を変えたアルバムなのだ。もっと正確に言えば、僕の人生が始まった1枚(いや2枚)。

 

 何度もあちこちで言ったり書いたりしていることだけれども、もう一度言わせて。僕は1991年10月から1992年9月にかけての1年間、父の仕事の都合でアメリカに住んでいた。ペンシルベニア州ハーシーという平和な田舎町。あのハーシー・チョコレートで有名な、ハーシー。……って話を続けていくと、長編記事になってしまうので、ポイントに絞って言うと、右も左もわからない(でも、それなりに日々を満喫している)小6の僕にある日天啓のように降り注がれたのが「November Rain」のMVというわけです。あまりに劇的な楽曲の展開に心奪われると同時に、目に飛び込むものすべてが信じられなかった。呆気にとられるほどカッコよかった。それまでウキウキ観ていたマイケル・ジャクソンとかクリス・クロス(懐かしい……)とは明らかに違った。

 

 この時期に、ある程度物心がついた状態で「アメリカ」を体感したことは財産だと思っている。湾岸戦争の空気がまだリアルに残り、後にオルタナグランジと呼ばれることになる、なんだか暗い音楽(幼いながらもそう感じた)が人気を博し……。とにかく、底抜けに明るいアメリカでなかったことはよく覚えている。日本を発つとき不安で泣いていた僕は、帰りの飛行機で「日本に帰りたくなくて」泣いていた。ハーシーのみんなの温かさ、風の匂い、空の広さ。40数年の半生のなかでたったの1年の出来事だけれども、僕の感性の基礎となったことは間違いない。

 

 まあ、つまり、何を言いたいかというと、僕にとって、UYIは人生最良の日々を思い出すスイッチなのであります。穢れなき魂に放り込まれた、ごった煮の危険なハードロック。

 

『UYI I』はカセットテープで持っていた。「November Rain」のシングルもカセットで。たった1年の滞在ということで、CDプレイヤーは日本に置いてきてしまったのだ。 ああ、本当に、いろんなことを思い出してしまう。ちょっと最近、センチメンタルが過ぎるんじゃないのか、自分!?

 

 何はともあれ、2022年ヴァージョンの「November Rain」が楽しみです。僕はどの形態で手に入れるのだろう? 果たして、来日公演には行けるのか? 気が向いたら、また書きますね。こうして気楽に書くことが癒しになると実感してきたぞ。

2022年

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い申し上げます。

 

東京って何年かに一度、本格的に雪が降るのですが、昨日がまさにその日だったみたい。気づいた時には向かいの家の屋根が真っ白に。外が静かなため、部屋で物事を考えるにはもってこいなのだが、路面凍結はおそろしすぎます。近所の吉野家の前で派手に転んでいた自転車のおばちゃん、大丈夫だっただろうか。

 

さて、はてなブログから「そろそろブログを更新しなさいよ?」的なお知らせが来たのです。どれどれと確かめてみたら、ちょうど1年前の年始の挨拶を最後に更新が途絶えています(※「2021年」という僕の前回の投稿を参照されたい)。
己の怠惰さに絶望すると同時に、笑ってしまいましたよ。もの書きを名乗っておきながら、こういうのはよくないよなぁ。

 

コロナ下(ある時点から、あんまり「禍」と書きたくなくなった)における新生活には良くも悪くも慣れてきました。早寝早起き、ストレッチ、適度な酒量、語学学習(英仏)、蔵書整理など、プラス面は山ほどあった。あらゆることをのらりくらり実践してきたつもりですが、次から次へとよくわからんことが襲ってきて戸惑っているのも事実。こうした〈しんどさ〉を隠さないことも、これから生きていくうえでは大切になるのかな。ホント、早く大手を振って人に会いたいです。何のモヤモヤも抱えずに、飲みに行きたい。あなたに逢いたい。
(「つべこべ言わずに行けよ!」って話ですが、そこを詳しく説明すると長くなるので割愛。)

 

近年、120本/年のペースで観に行っていたライヴは2020年、10本にまで減少(1、2月のみ観覧)。2021年のライヴ本数に至っては、まさかの1本でした(配信を除く)。2022年はさすがに緩やかに回復すると踏んでいるのですが、以前のように頻繁にライヴ通いするのはまだまだ難しそう。ある種の覚悟が求められる今日この頃です。人それぞれに事情がある……ウム。

 

そんななか、僕は今まで以上に建設的になりたいと思っている。いや、今年で42歳になるおっさんが何言ってるんだって感じですが、実際、そうなのだ。やるしかないのだ。ですよ。(昨年末の錦鯉を見てウルウルしたタイプ)

 

2023年5月に文筆家デビュー10周年を迎えます。

 

「志村つくね」の名で商業誌に出現してから10年。あたたかい声援に支えられながら、ここまでよく持ちこたえてきました。が、未だに何一つ大きなことを成し遂げられていません。ALWAYS風前の灯火。僕は単著を出したいッ!

 

べつに何かイベントを考えているわけではないけれども、2022年の過ごし方によって、その先が大きく分岐するのではとワクワクドキドキしている。「焦ってはいかんよ」と自分をドードー落ち着かせる時期はとうに過ぎ去り、「常に焦れ」のシーズンに突入したと自覚しています。

 

今年はたとえ少しずつでも、発信を頑張ります。兎にも角にも、本を出せるぐらいの分量を。そして、この機会にあらためて、自分のことをちゃんと皆さんに知っていただこうと思う。〈誰からも頼まれていない原稿〉を粛々と準備中です。

 

■2021年私的アルバム・ベスト10
1. LUCIFER『LUCIFER IV』
2. MANESKIN『TEATRO D'IRA VOL.I』
3. 人間椅子『苦楽』
4. THE PRETTY RECKLESS『DEATH BY ROCK AND ROLL』
5. GASTUNK『VINTAGE SPIRIT, THE FACT』
6. CONVERGE & CHELSEA WOLFE『BLOODMOON:I』
7. VOLBEAT『SERVANT OF THE MIND』
8. MANIC STREET PREACHERS『THE ULTRA VIVID LAMENT』
9. JERRY CANTRELL『BRIGHTEN』
10. SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』

 

今の気分で選んだ2021年の年間ベスト10です。「自信を持って友達に薦める作品」を選出基準としました。例年よりも名盤が豊富だったのは、気のせいではないと思う。このコロナ下でのクリエイティビティというものに興味津々です。まあ、明日になったら、ランキングも大幅に変動するでしょう。二大超大作であるところのIRON MAIDENとMASTODONに関しては、凄いのはわかるが未だに消化しきれていないという事情もあるため、こんな順位表です。LUCIFERは彼らの最高傑作と断言する。

というか、正直なところ、まだ聴いてないアルバムが山ほどあるのです。みんな、いつ音楽を聴き、本を読み、映画を観ているのだろう? 時間の流れは残酷だ。もっとピリっとします。

 

今夜はお好み焼きです。呑む。

2021年

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い申し上げます。

 

なんと、前回のブログ更新から丸一年ですよ。この一年で世界はすっかり様変わりしてしまいました。ドギマギしない人はいないでしょう。精神の図太さにそこそこ自信のあった僕も十分ドギマギでござる。「まいった……」の時期が長く続いた2020年であったことをここに告白します。

 

なんだか悪い方向へと動いている世の中ですが、良いこともあるにはあるよなぁと思えるようになった。僕は他者への思いやりということを身をもって知りました。あなたの何気ないひと言にどれだけ救われたことか。その振る舞いを見て、どれほど勇気づけられたか。僕もそうありたい。アホな話をいっぱいしたい。そんな気持ちで毎日を生きています。生活するって、大変。

 

感覚的には、2020年3月以降がところどころゴッソリ欠落しているような状態なんですよ。手帳を見返してショックだったのは、もの書きデビュー後ほぼ毎年120本ほど観ていたライヴがわずか10本に留まったことです。さいたまスーパーアリーナQUEENADAM LAMBERTが本当に昨日のことのよう。あれは実に神々しいショーでした。

 

今年は僕の世界一好きなバンド、GUNS N' ROSESの歴史的問題作『USE YOUR ILLUSION I』『USE YOUR ILLUSION II』リリースから30年を迎えます。つまりは、僕がロックのカッコよさに目覚めてから30年という記念すべき年でもあるのです。これは燃える。私的文脈からいっても、燃える。91~92年頃の日米の音楽を検証する機会を持ちたいなぁ。「ブログでやれ!」って話かもしれませんが。

 

ひっそりと、新しいことにも挑戦しています。たとえば、アボカドを水栽培したり、豆苗を育てたり……はともかく、俳句を真剣に作るようになったのは良い傾向。8年続けた短歌も続行してはいますが、俳句のほうが(短いし)性に合ってるのかなと思う今日この頃です。無印良品のダークグレーのリングノート(「デスノート」って勝手に呼んでる)にはエッセイや小説のネタが蓄積されています。蓄積されるだけで作品として結実しないのはどうかと思うが。

 

とまぁ、こんなところです。ブログを書くのがあまり得意ではない(ブログ特有の改行の技法みたいなのに、いまいちノれない)ので、今後は仮死状態のnoteも有効活用しましょう。はてなブログは告知メイン、noteは創作メインといった使い分けをしようかな。誰もそんなの気にしないだろうけど。

 

今後もなるべく明るく朗らかな発信を心がけたいです。憎しみではなく喜びをお届けしたいと切に願う。文筆家を名乗るからには、この志を保たねば。

 

マイペースを貫くことが困難な時代になってしまいましたが、無理せず元気に生きましょう。完璧にこなせなくっても、いいじゃない。と、自分に言い聞かせています。どこかで実際にお会いした暁には、お互い笑顔でいられるといいですね。

 

決意表明だけで終わらない、素敵な2021年にしますよ。

2020.1.4.ROCK TILL DAWN VOL.82 DJプレイリスト

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い致します。

 

1月4日、新宿歌舞伎町のBar FROM DUSK TILL DAWNにて行われた新年会のDJプレイリストを公開します。

久々のDJだったのですが、皆さん温かくお付き合いいただきまして、ありがとうございます。OZZYの「Perry Mason」(アルバム『OZZMOSIS』収録の名曲!)がやたら好評で、よかったよかった(笑)。僕はこの曲をOZZYの最高傑作のひとつだと信じて疑いません。ド定番で盛り上がるのも最高ですが、隠れた名曲を共有する喜びといったらないですね。

KISSの「Psycho Circus」もそうだけど、90年代半ばから後半にかけて生まれた”微妙な位置づけの名曲”はもっと評価されるべきだよなぁと思います。

【25:00-25:30】
・Sunday Bloody Sunday/U2
Blue Blood/X
・Sleep Now In The Fire/RAGE AGAINST THE MACHINE
・Perry Mason/OZZY OSBOURNE
・Dead In Hollywood/MURDERDOLLS
・Saints Of Los Angeles/MOTLEY CRUE
・Psycho Circus/KISS