志村つくねの父さん母さんリヴァイアサン

文筆家・志村つくねの公式ブログ。本・音楽・映画を中心に。なるべくソリッドに。

僕と阪神タイガース

 ただいま大学院時代のことを連載中ではあるが、ここでちょっと休憩。18年ぶりにリーグ優勝を成し遂げた阪神タイガースのことを書いておかないと、後悔する。ときにベイスターズを、またあるときはライオンズを応援しているお前が何を言うとるか! とのお叱りが聞こえてきそうだが、そんなに目くじら立てないで! たしかに、横浜、西武、近鉄、南海(ダイエーでもソフトバンクでもない)のファンを公言している僕だが、遺伝子レベルで居ても立っても居られなくなるチームといえば、どうやら阪神のようだ。

 タイガースが日本一になったのは、1985年のことらしい。「らしい」と言ったのは、幻のような映像が脳内に刻まれているだけだからだ。優勝の瞬間、実家のテレビの前で、父(東京出身だが阪神ファン)と一緒にお手製の紙吹雪をぶちまける図。これが僕にとっての「阪神の最初の思い出」である。

 小学生低学年の頃は、運動神経がないくせに、ストライプの阪神帽を被ってお出かけしていた。裏に六甲おろしの歌詞が書かれた、真弓のサイン(印刷ですが)入り下敷きを愛用。野球をやってもいないのに、甲子園球場でヒーローインタビューを受けるのが夢だった。米ペンシルヴェニア州ハーシーに住んでいた頃は、阪神百貨店のセールで母が買い求めた「HANSHIN TIGERS」のウィンドブレーカーを着て遊んでいた。「HANSHIN」と「HERSHEY」の字面が似ていたせいか、クラスメイトにやたらと好奇の目を向けられたのは甘酸っぱい思い出である。そういえば、かの地のハロウィンでは、虎メイクで阪神の法被を着て、「トリック・オア・トリート!」などとやったものです。正気の沙汰ではないな。撃たれなくてよかった。

 以前にも書いたかもしれないが、初めてプロ野球を観たのは1987年の大阪球場、南海対阪神のオープン戦だった。トラキチの祖父による解説付きの観戦。その頃はまだギリギリで、バース、掛布、岡田の名がスコアボードに刻まれていたように思う。甲子園球場デビューは意外と遅く、中学生くらいだったような。俗にいう、90年代暗黒時代のタイガースである。めちゃくちゃ弱かったが、スター性豊かな新庄と桧山を生で観る価値は十分にあった。新庄は守備練習でもプロの技で魅了してくれる、見上げた選手だった。桧山のレフト方向の打球の美しさにもとことん惹かれた。何事においても、キッズの心をワクワクさせる人というのは、気持ちの良いものだと感じ入った。弱さの中でこそ、美学は輝くのだ。

 今では信じられないかもしれないが、阪神は「たまに勝つことがある」球団で、当時はホームランを二桁打つ選手が神様に見えた。弱小ながらも戦力をやりくりして戦う姿は、その後の僕の思考回路に少なからぬ影響を与えていると思う。

 大学進学にともない、2000年から東京生活を始めた僕にとって、阪神はやや遠い存在になった。まず、日常的にサンテレビを観られないというのが大きかった。電車の中でスポーツ新聞、特にデイリーを広げているおっちゃんにもお目にかからない。周りは巨人ファンだらけかと思えば、そうでもなくて拍子抜けした。そもそも、関西と比べて、関東の皆さんはそこまで野球文化にどっぷり浸かっている感じでもなかった。まあ、首都圏だもの、他に娯楽はあるよね。生で阪神の選手を拝むことはほぼなくなったが、夏の帰省と絡めて、甲子園で高校野球を楽しむ習慣ができた。2006年頃からは、神宮、横浜、所沢にふらっと出かけてプロ野球の空気を浴びるようになった。

 ところで、僕はチームカラーというものを重視している。自分とグルーヴの合わない監督が指揮を執っている時期は、ほとんど関心を持てなくなってしまうのだ。そんなわけで、ここ10年以上、阪神の「色」にピンときていなかったのだが、ようやく期待を持てる監督の再登板とあって、自然とテンションは高まった。「アレ」という言葉が独り歩きするのはちょっとどうかと思っていたが、今年のペナントレースは見事なゴールを迎えられたので、問題なし。岡田監督のインタビューからは「大阪のエエおっちゃん」の機知とユーモアが感じられて、思わずニヤけてしまう。今のチームは「四球を選ぶ」という僕好みのスタイルなのも嬉しい。今岡や久保田など、僕が熱心に応援していた時代の顔ぶれがコーチを務めていて、胸が熱くなる。

 自分など、ガッチガチの阪神ファンではないと思っていたが、ここまで書くと、なかなかのレベルの思い入れがあるなと気付いてしまった。2003年と2005年の日本シリーズでの散り方はあまりに呆気なかった。肝心なところで負けまくるのが阪神の美徳といえば美徳だが、今回はそういうの要らないから! ここまできたら、どうか日本一になってください。

 大阪球場で生の阪神を見せてくれた最愛のおじいちゃんは、藤浪のルーキーイヤーにこの世を去った。今年の阪神の戦い方と藤浪の謎の活躍ぶり、おじいちゃんは天国でどう受け止めていることだろうか。いや、だから、せっかくなので、日本一になってよ! 頼むわ。

 こんなことを綴っているうちに、オリックスパ・リーグ制覇のニュースが届いた。こうなったら、日本シリーズは是非とも阪神×オリックスの関西対決でお願いしたいところ。他球団にはCSで空気を読んでもらおう。たまにはそんな楽しみがあったっていいじゃないか。ホント、惑星直列ぐらいの滅多にない出来事なのだから。

 それはそうと、NEW ERAのメッシュキャップとか、優勝セールの対象になりませんかね? 久しぶりに阪神帽を被りたくなっている自分がいる。返す返すも残念なのは、いつぞやのDIR EN GREY 薫さんと阪神タイガースのコラボ法被を購入しなかったことだ。この手のグッズは一目惚れした時に買っておかないと、激しく後悔することになるなぁという案件である。

薫×阪神タイガース コラボ法被 | GALAXY BROAD SHOP

 ああ……。優勝した時だけ饒舌な奴、みたいに思われたらやだなぁ。まあ、虎に対する思い入れは深いので、ご勘弁。「にわか」でないことは確かです。